霧積温泉 金湯館

タイトルのまんまですが────
先日群馬と長野の県境の山間にある霧積温泉の老舗温泉旅館、「金湯館」へお泊まりに行って参りました。


母さん僕のあの帽子どうしたでせうね。
ええ、夏碓氷から霧積へ行く道で渓谷へ落とした、あの麦わら帽子ですよ。

霧積温泉の「金湯館」といえば、1976年に小説が出版、77年に映画化された『 人間の証明 』(森村誠一)にその名が登場し一躍有名になった温泉宿です。ある世代以上の方は作品についてご存知の方も多いと思われます。

森村誠一氏が学生時代に金湯館に宿泊し、ハイキングに出掛けたのです。その時に山の頂きで宿のお弁当の包み紙に刷られていた西条八十(さいじょう やそ)の“帽子”の詩が目に留まりました。それが昭和50年代の初めに大ヒットした『 人間の証明 』を世に出すきっかけになるのです。

霧積温泉の金湯館に関してはあまりにも有名で語り尽くされているので、いつもの如く私がここで取り上げなくても・・・なのですが、とてもよい温泉宿でしたのでここにてルポと感想を述べたいと思います。
行ったことあるし知っとるわ〜なんて方はさらりと流してください。

今回は中三依温泉の時の3人で電車の旅。そして金湯館の宿泊でお初なのは私だけ。本当は2年前に行く予定を立てたのですが、何だかんだお流れになり、この度やっと実現したわけです。

横川駅13:57着で来てくださいと宿の方からのご指定がありましたので、朝もゆっくりのんびり横川まで向かうことにしました。
群馬の高崎駅まで湘南新宿ライン、高崎駅で信越本線に乗り換え横川駅まで。湘南新宿ラインでグリーン車に乗り、昼ビールを飲みながら駅弁食べ温泉宿へ向かう・・・あゝささやかな贅沢也。

高崎駅から横川駅まで34分。信越本線の車窓からはバイクで見慣れた妙義の山々が見えました。

予定通りに横川駅に着きました。これから若女将さんの運転で宿に向かいます。宿泊する人のみですがこの様に送迎してくだるのです。

宿までの険しい山の細道をすいすいと運転する若女将さん。運転しながら道案内しつつ色々とお話してくださいました。

昨年の台風19号で金湯館まで行く唯一の県道、群馬県道56号が崩落の被害にあい全面通行止めになってしまったのです。
県道が完全に復旧するまではお客様は通してはいけないので、宿泊できる人は往復登山が出来る限られたお客様のみ、という大変な状況だったそうです。

予約が入っても徒歩で最低3時間半はかかると説明すればキャンセル・・・。台風以降700人近くもキャンセルになってしまったみたい。損失額は相当なものだったと思われます。

災害とはいえ宿は無事なので保険適用にはならない上に、道路復旧にはもしかして1年かかるかもしれない、と聞いた時には営業困難で閉業せざる得ないと覚悟したそうです。


群馬r56の崩落した所。

我々が予約した時には「今月(1月)中には県道が復旧する予定ですが、延期になるようであればご連絡させて頂きます」という話でした。
予約してからは宿のHPをチェックしていたので、予定通り2月1日13時に無事開通した報告を見て安心しました。

宿のファンやリピーターの方はもちろん、今回無事泊まれることになった我々もほっとしたけど、何より安堵したのは宿の方達でしょう。ほんとーーーーによかったです・・・

ちなみに若女将さんは1972年に起きた”霧積温泉女性殺人事件”現場の作業小屋があった場所も教えてくださいました。事件はまだ未解決なんですよね( ^_^ ;)怖い…


群馬r56から途中先は上信越国立公園内というので一般車両は入場禁止。ちなみに「きりづみ館」は2012年4月に閉館しています。

バイクや車で来た人は「きりずみ館」の駐車場に停めて、そこから送迎してくださるそうです。
日帰りの立寄り湯の場合は宿まで30分弱山歩きをしなくてはいけません。
(A´∀`)
ちょっとしたトレッキングになるけど、汗かいて辿り着いた先には温泉が待っている・・・それもまた楽しそう。


電話してゲートを開ける若女将さん。

ここから宿までの道がまた凄いのですよ。雪が残り凍結してる上にガードレールも何も無い細道。
どうやらオフロードバイクの人達がゲート関係なく入ってきてしまうそうです(笑)温泉も入って帰っていくそうな‪w

宿に着きました。

宿に滞在した2日間は東京でも最高気温6.9℃、最低気温-2.1℃の真冬の寒さでした。
天気予報で寒くなるのは聞いてたけど、寧ろ温泉入るには丁度いいだろう〜くらいに軽く考えてたのですが・・・

いやいや現地は本気で寒くて-8℃!

外観からして風情のある温泉宿です。金湯館は明治17年(1884)創業という歴史ある温泉宿なんですね。

金湯館の本館には、伊藤博文が明治憲法の草案をねった部屋が今も残り客室として使われてます。そして勝海丹や幸田露伴、与謝野晶子夫婦等、各界の著名人達が訪れてます。

昔の霧積温泉は、このような著名人達が訪れるほどメジャーな温泉郷で、温泉宿が複数軒あり別荘やお店が並ぶ賑やかな避暑地だったそうです。
それが明治30年ころには近くの軽井沢の開発が進み、避暑地としての人気を奪われてしまったのです。
そのうえ追い討ちをかけるように明治43年に大規模な山津波が発生、他の宿や別荘は全て壊滅してしまいました。その中で被害をまぬがれたのはこの金湯館1軒のみという、壮絶な過去を経て今も変わらず営業を続けているのです。

山奥にある秘湯ほどその維持は困難と聞きます。温泉宿は湯を守る人達がいるからこそ我々が楽しめることができます。大袈裟ではなく彼らがいなくなってしまったら、宿も秘湯も消えてなくなると言われてるのです。


入口

標高1180mなだけあって、宿には立派な氷柱がなってました。氷柱なんて見たのは何年ぶりだろうか。

入口からすぐのロビー。昔からある宿の雑多な感じがいいですね。さり気に麦わら帽子が掛けてあります。

館内のロビーや通路には新聞記事や写真に文献などが並び、金湯館の歴史を感じさせてくれます。

大女将さん。暖かく出迎えてくださいました。

本館から別館、そして風呂場への通路。

通路の先に温泉があり、手前が女湯で男湯はつきあたりにあります。

コタツが2つ、3人で終始ここでのんびり寛ぎました。

泊まったのは別館でした。私は特にこだわりが無かったので別館でよかったけど、より老舗感を味わいたいなら本館がオススメみたい。伊藤博文の部屋は今も人気があるそうですよ。

襖を開けた隣の部屋には既に布団が敷いてありました。布団の中には電気アンカが入ってて暖かい〜。とても嬉しい心遣いです。

凍った水車の氷柱。素晴らしい、自然の造形美です。

冬の金湯館は氷柱が凄くて・・・・なんて話を仲間から聞いてたので、どんなものか一度は見てみたかったのです。
夏や紅葉シーズンは間違いなく良いだろうから、敢えて真冬の厳しい寒さの時期に訪れたいと思っていました。
雪景色は見れなくても立派な氷柱が見れたし、念願叶ったりです。良いタイミングで来れました。

やはり暖冬の影響もあって今年は特に雪が少ないそうです。
それにしても寒くて吐く息が真っ白!

女湯の前にあるシンクの蛇口は温泉が常に流れてるので、成分がびっしりついてました。凍ってしまうので蛇口を完全に閉めてはいけないらしい。


女湯の内湯の入口。

脱衣場。
朝は椅子に座って髪を梳かしながら寛いでいる大女将さんと鉢合わせ。せっかくなのでちょっとお話してきました。

金湯館の温泉は男女ともに露天はなく内湯のみ。レトロなステンドグラスが目を引きます。

お湯は正真正銘の源泉かけ流しで加水、加温も何もなし!

無色透明のカルシウム一硫酸塩温泉(低張性弱アルカリ性温泉)で毎分300ℓの源泉が湯口から絶えず流れ出しています。

源泉の温度は38.9度。
ぬる湯なのでずーーっと入ってられるのです。

体にふわ〜っと細かい気泡が優しく纏わりついて心地よい。
人肌よりちょっと温かい、心地よい温さ。。

熱い温泉も好きだけど
温い温泉もまたいいものです。

湯口にはコップが置いてあって飲泉できるようになってます。味は特に・・・だったかな?笑


温泉分析書

こちらはかけ流しの岩清水。空いたペットボトルに入れて部屋に持って帰りました。自然の湧き水は美味しいね〜

部屋を一歩出れば白い息。

温泉であたたまった後は
夕ご飯までコタツに入りながらゴロンとして寛ぐ

3人でたまに話しては
各々自由な時間を過ごす

忙しない日常から離れ、何も考えず、何もせず・・・
ゆったりとした時間の流れに癒される

───────────────

気づいたら夕ご飯の時間になってました。
若旦那さんが部屋までお膳を運んで来てくださいました。

まず驚いたのは山の幸をふんだんに使った天ぷら。物凄いボリュームに驚きました。
やったー!美味しそう!

山菜の和え物に漬物、刺身こんにゃくに、厚みのあるだし巻き玉子。

・・・どれもうまい!!

味付けも美味しくて箸が進みます。


こちらは朝ご飯。カレー付きでした。

朝晩にお櫃のほかほかご飯。たまらん美味しかった。

夕ご飯も完食し、お腹いっぱいになって敷いてある布団にてゴロン。
あ~しあわせ。。

夕ご飯のあとまた温泉入りにいったのは言うまでもありません。
2日目も11時のチェックアウトまで温泉入ったりゆっくり過ごすことが出来ました。

『 人間の証明 』は以前KindleでDLしたけど、せっかくなので文庫本を購入。宿で購入すれば記念のスタンプを押してくれます。

とてもいい宿でした。おもてなしに素晴らしい温泉に美味しいご飯。そしてゆったりとした心地よい時間を贅沢に味わうことができました。
代々家族経営なのもあるのか、宿の方達の人柄も飾らなくどこかアットホームな雰囲気です。
なんだかあたたかい・・・また訪れたくなるような、そんな温泉宿です。確かにリピーターがいるのも頷けます。

緑鮮やかな季節。
真夏は下界より-10℃でかなり過ごしやすいそうです。
夏にも訪れてみたいものです。

帰りは若旦那さんの運転で駅まで。若旦那さんはちょっとシャイな感じですが、感じ良く色々お話してくださいました。

その中でも印象的だったのは、俗世から逃げたく退職金をはたいて最長2年9ヶ月泊まっていたお客様の話。
湯治で自炊してたとかではなく、我々が頂いたような宿のご飯を毎日食べては、ビールも多い時は2〜3本飲んでたそうな。
たまに山から降りてはパチンコしに行ったり贅沢しながら過ごしてたら、なんと宿泊代、総額1000万以上!
ついには足りなくなって出ていったらしいけどその後の消息は不明・・・

その方は今どうしているのでしょうか笑
にしても宿代で1000万って凄すぎる〜💧3年近くの滞在は長すぎるけど、あの温泉の良さと居心地の良さを思えばその方の気持ちもわからないではない。

1泊は短いなぁ〜・・・最低でもあと2日3日連泊したかった。

金湯館

コンビニ等はもちろん周りには何も無く、便利さとはかけ離れた山奥にあります。それがまた良いのです。

気になった方は是非一度おとずれてみてください( ‘-^ )b

群馬といえばもつ煮!ですね。
余談なんですが、以前会社の営業が高崎出張時に買ってきたのを頂いたのが、この『 ジャン辛 もつ煮』。

これがまぁ美味しくて。うちは2人とももつ煮大好きなので、うめぇうめぇと美味しく頂いたのです。今回高崎駅で見つけたので即買いしました。

見た目ほど辛くないのですよ。
ちょい辛いもの好きで、もつ煮好きは高崎に来た時には是非
(◍¯∀¯◍)

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